風に舞う花のように~第1章~
(´・ω・`)ノチャオ♪
はい、忘れた頃にやってくる更新ですよ~ 見てる人いないと思うが(´・ω・) [7] ルティエに無事到着した二人。 普段は田舎にいる二人なので久しぶりの街はとても新鮮で、それだけでわくわくした。 「すごい人だね」 「そうだね」 「でも・・カップルもすごくいるね」 「うん・・・そうだね」 雪の街ルティエ それはクリスマスになると大勢の人であふれるが、それ以外の日でも結構の数のカップルが訪れる街でもあった。 街の中央にはとても大きなクリスマスツリーがあり、街はたくさんのイルミネーションで飾られている。 一年中クリスマスを楽しむことの出来るルティエは、カップルにとってまさに絶好のデートスポットなのである。 「少し恥ずかしいね・・・」 ルイは顔を少し赤らめながらそう言った。 「ねぇイルト?これって・・・あに・・デート・・なのかな?」 「・・・・・」 「・・・・・・ごめん、やっぱりお使いだよね・・」 そう言ってルイは少し俯いた。 イルトは何も言わずにルイの手を握った。 「え?」 「ほら行こう」 「え?イルト?」 「お使いじゃなくて、デートだろ?」 「・・・・・うん♪」 離れえぬよう、流されぬよう握ったその手は・・とても温かかった。 [8] 二人は時間が経つのも忘れ、いろいろなお店を見て回った。 それは普通の街に住む人にとっては当たり前の買い物風景だったのかもしれない。 でも二人にはそれはとても特別で、とても大切なひと時だった。 とても短いけれど二人にとっては永遠の時間・・・ 一言で言うなら、そう・・「幸せ」だった。 しかしいつまでもそうしていられるはずもなく、二人は家へと帰ろうとしていた。 「今日はすごく楽しかった♪」 「ああ、そうだね」 「ねぇイルト?もしよかったら・・その、また一緒に来ようね」 「そうだね、楽しみだな。今度来るときは、ルイにあの服買ってあげられるといいな」 「でもあの服すごく高いから・・・無理しなくてもいいよ~」 「いや、俺があの服を着たルイを見たいんだよ。すごくかわいかったからな♪」 「え?も・・もぅぅぅ・・イルト~」 「あはは」 イルトはとても自然に笑っていたのかもしれない。 記憶をなくしてから笑わなくなったイルト。 その凍りついた心を解かしてくれた大切な人。 イルトはルイに出会わなければきっとこんな風に笑うことはなかっただろう。 でも、今こうして笑っている自分がいる。 幸せを感じている自分がいる。 それは偶然の出会いだったのかもしれない・・・。 でもそれを運命と信じることが出来た自分が、イルトは好きだった。 そしてこうして自分に笑顔をくれた大切な人は、全ての人を幸せにしてくれる、笑顔にしてくれる一輪の「花」なのだとイルトは思った。 「それじゃあ帰ろうか。帰りも一緒に歩いて帰る?」 「私は歩いて帰りたいな~♪」 「ならそうしようか」 そう言ってイルトはルイに手を差し出した。 そしてふと家の方角を見たときにイルトは一瞬言葉を失った。 「!!!」 「どうしたのイルト?」 「そ・・そんな・・・」 「イルト??」 「ルイ・・あれを・・・」 そう言ってイルトは家の方角を指差した。 「あ・・そんな・・どうして・・」 ルイはガタガタと震えだした。 イルトが指差した方角・・家のあるはずのその方角は、夥しいほどの煙と炎で覆い尽くされていた。 「ルイ、早く戻ろう!」 「う・・うん!今ワープポータルを・・」 「それはダメだ、もしワープポータルの出口が火の中だったら俺たちも無事ではすまない・・」 「あ・・・・」 「歩いて行くしか方法はない、だから急ごう!まだ全てが間に合わなかったわけじゃない」 そう言ってイルトはルイの手を取り駆け出した。 繋いだルイの手は震えていた。 もしかしたら自分の手も震えていたのかもしれない・・。 でもイルトにはそれを気にする余裕さえなかった。 無事であって欲しい、生きていて欲しい・・・ただその言葉で頭の中はいっぱいだった。 「ハァハァ・・・」 どれくらい走ったのだろうか・・・ 息が切れ、足が重い・・でも止まるわけにはいかなかった。 一秒でも早く・・・その言葉が二人を動かしていた。 「ハァハァ、ルイ大丈夫か?」 「う・うん」 しかしルイは辛そうだった。 「イルト・・パパとママ・・きっと大丈夫だよね?」 ルイが不安そうな顔で聞いてきた。 「・・・・・・わからない・・」 絶対大丈夫だよ・・そう言いたかった・・。 でもイルトには言えなかった。 この言葉はもしかしたらルイを傷つけてしまうかもしれない、とても曖昧で残酷な言葉だったから。 「でも、俺は信じている」 「そう・・だね・・私も信じてる。・・・・・ありがとうイルト」 「ルイこれだけは忘れないでくれ、どんなときもルイは一人じゃない、俺がずっと傍にいるから」 「うん」 ルイはイルトの手を強く握り返した。 不安な心が和らいだ気がした・・・。 ただ一つの想いを目指し走り続けた二人。 それはとても不安だったのかもしれない、辛かったのかもしれない。 それでも二人はけして止まる事はなかった。 走りながらも、二人は繋いだ手を離すことはなかったのだから・・。 [9] 村に近づくに連れ煙の量は増し、村につく頃には視界のほとんどは煙で覆われていた。 「ルイ・・大丈夫か?」 「うん、なんとか・・・ゲホゲホ」 煙の中を二人は懸命に突き進む。 視界が悪い・・闇の中に迷い込んでいるような感覚を二人は覚えた。 まるで二人の侵入を拒むかのようなその煙の中を、二人はたった一つの願いを信じて進み続けた・・・。 そして村へと到着した二人。 だがそこで待っていたものは、二人の知っている光景ではなかった。 無残にも崩れ、燃え続ける家。 焼け爛れ、命の光を失った村人。 そして・・全てを覆い尽くす程の炎と煙・・・・。 かつてそこに存在していたはずの光景は失われ、地獄へと移り変わっていた。 「そんな・・・どうして・・」 そう呟きながら震え続けるルイ。 ルイの目からは光が消えていた。 「ルイしっかりするんだ、まだ生存者がいるかもしれない、諦めるのはまだ早い」 イルトは震えるルイを抱きしめながらそう言った。 だがルイからの反応はない。 「ルイ!」 イルトはルイを強く抱きしめた。 「頼む・・しっかりしてくれ・・。俺一人ではダメなんだ・・お願いだルイ・・」 「イルト・・・」 「ルイ・・俺がついているから」 ルイの目に光が戻る。 「そう・・だね・・諦めるのはまだ早いよね」 「ああ、そうだ。俺たちにはまだやるべきことがある・・・探そう!」 「うん!」 二人は生存者を探すため二手に分かれて村の中を探した。 [10] 「(この村でいったい何が・・・・)」 そう思いながらイルトは夢中で生存者を探した。 何故この村が襲われたのか、どうしてこの村だけだったのか・・。 そんなことを考える余裕はイルトにはなかった。 何とかルイの家の前までたどり着くことが出来たイルトだったが、すでに家は焼け崩れていた。 「く・・・」 イルトは言葉を失った。 さっきまでここに住んでいたはずなのに、今はもうそれすら出来ない。 自分はまた失ってしまったのだ・・・・ そんな思いが頭の中で駆け巡る。 イルトは呆然としたまま崩れた家を眺めた。 「!」 その時イルトは崩れた家の中でルイの母親を見つけた。 「おばさん!」 イルトは夢中でルイの母親に近づく。 瓦礫にルイの母親は挟まれていた。 「おばさん今助けるから!!」 そう言って瓦礫の中からルイの母親を引っ張り出した。 「おばさん!!!」 しかし冷たく固まったルイの母親から返事は返ってこなかった・・・。 「そんな・・おばさん・・」 どんなにイルトが呼んでも、その言葉は命の光を失ったルイの母親へ届くことはなかった。 イルトはゆっくりとルイの母親を雪の上に寝かせると、家を改めて見回した。 「あれは?」 何かを見つけ家へと近寄る。 崩れた家の中から出てきたのは焼けた花の残骸・・・・・ それはルイとイルトを祝うために用意された花だった。 「そんな・・ホントにパーティーするつもりだったんだ・・・・」 焼けた花を手に取った。 本当ならここで行われるはずのパーティー・・ 見ることも出来なくなったその幸せを、焼けた花は悲しく物語っていた・・。 「っ・・・・・・・・」 言葉が出なかった。 ただ悲しくて・・切なくて・・イルトはその焼けた花を握り締めた。 「・・・・・ぅ・・・」 そのとき微かに家の中から声が聞こえた気がした。 「・・・・・・・・ぅ・・ぅ・・」 間違いじゃなかった。 確かに家の中から声は聞こえた。 イルトはその声がした辺りを必死に探した。 「!」 そこでイルトは何かを見つけ瓦礫をどかせた。 「おじさん!」 そこにいたのはルイの父親だった。 頭から血を流し、身体のあちこちも焼け爛れていた。 「おじさん!しっかりしてください!!」 「ぅぅ・・・」 「おじさん!」 「い・・イルト君・・か?」 ルイの父親はゆっくりと目を開けた。 「おじさん・・よかった、今すぐ手当てを・・」 「イルト君・・話がある・・」 そう言ってルイの父親はイルトの言葉を遮った。 「でも・・」 「いいから・・聞いてくれ・・」 「・・・・・・」 「私はもう・・なが・・く・・ない・・」 「そんなおじさん諦めないで!」 「だから・・伝え・・て・・おく・・ことが・・・ある」 話すことすら苦しそうだった。 だがルイの父親は止めることなく話を続けた。 「ここを・・襲った奴ら・・は・・うぐぐ、るるる・・ル・・イを・・捜し・・ていた。 たたた・・の・・む・・ルイを・・まま・・・守って・・・く・くく・・・・」 突然ルイの父親から力が抜けた。 「おじさん?・・・おじさん!!?」 しかしルイの父親から返事は返ってこない。 「そんな・・そんな・・おじさん!!おじさん!!!!!」 「・・・・・」 「おじさん!!・・・ぁぁぁ・・」 悲しかった、ただその感情だけがイルトを支配していた。 「イルト・・」 その言葉に振り返ると、そこにはルイが立っていた。 「ルイ・・・・俺は・・俺は・・・」 「もういいの・・イルト」 「でも・・」 「大丈夫、私は大丈夫だから。さっきイルトが言ってくれたから、俺がついてるって。 だから・・私は大丈夫だよ」 「ルイ・・」 「イルトにも私がついてるから・・・だから大丈夫だよ」 そう言ってルイはイルトを抱きしめた。 優しくて・・とても温かかった・・。 そして自分の中の悲しみが薄れた気がした。 いつも辛いときには必ず力をくれる人・・。 必ず自分を見ていてくれる人・・・・。 そんな自分にとって大切な人を心から守りたい・・そう思った。 「ありがとう・・ルイ。俺はもう大丈夫」 そう言ってルイから身を離した。 そしてルイの父親をルイの母親の隣まで運ぶと、そっとそこに寝かせた。 「おじさん・・おばさん・・今までありがとうございます。 俺が・・俺が必ずルイを守ります。どうか・・安らかに・・・」 「パパ・・ママ・・いつまでも私たちのことを見守っていてください・・」 そして二人はそっと声をそろえてこう言った。 「・・・・・・行ってきます」 そしてイルトはルイを連れてその場を後にした。
by iruto
| 2007-10-12 08:02
| 風に舞う花のように
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