風に想いをのせて・・・

風に舞う花のように~第1章~

最後まで行くぜ!(`・ω・´)シャキーン
・・・・ごめん、面倒になっただけ・・・・



[12]

「ゆ・・・き・・」
気がつくと自分の身体に雪が降り積もっていた。
ずっと俯いたままいったいどれくらいの時間が経ったのだろうか・・。
留まることなく流れ続ける時間の中で、イルトは一人取り残されてしまっていた。
記憶を無くし生きる希望を失ったイルトには、もう・・瞳から光は失われていた。
何故こんなことになってしまったのだろうか・・・・。
その思いが・・・イルトの時間を止めていた。
心にあいた隙間をうめてくれる人はもう居ない・・・
隣で微笑んでくれる人はもう居ない・・・
安心させてくれる人はもう・・・・・居ない・・。
わかっていても信じることが出来なかった。
認めてしまうのが・・・恐ろしかった・・・・。
何を目指していたのか、何を守りたかったのか・・・
どうして・・生きていたのか・・・
そんな事すらもうイルトにはわからなかった。
「・・・・・・・・」
しかしその時はふとルイから渡された指輪が目に入った。
それは大切な人から貰った・・最初で最後のプレゼント・・・。
「ぅ・・ぅぅ・・」
イルトの目から涙が零れ落ちる・・・。
何百年も前の古い指輪・・・その古い指輪はとても丁寧に手入れされていた。
どれほどルイにとってその指輪が大切なものだったのか・・・それが伝わってきた。
そしてその大切な指輪を渡された自分・・・。
イルトはその時に初めてルイが何を伝えたかったのか・・・・・
何を望んでいたのか・・・その意味を知った。
「ぁぁぁ・・・」
涙が止まらなかった。
どうして自分が泣いているのか・・その意味にイルトはやっと気がついた・・・。
「俺は・・・バカだな・・。ルイが何を伝えたかったのか・・・やっとわかったよ。
俺はもう・・・・迷わない・・・・」
そして・・・イルトの中で、再び時間が動き出す・・。
一度は止まった時間でも・・・
いつかは必ず動き出す・・・
一度は迷った時間でも・・・
想いを刻み動き出す・・・・・・
「ルイ聞いてくれ、俺は・・・・・・・・・」
手を伸ばせば消えてしまう雪・・・でもけして止むことのないその雪は・・・
静かに時間を刻みながら・・・
全てのものを見守るように・・・
全ての想いを包み込むように・・・
いつまでも優しく二人に降り続けた・・・・。

         ~一年後~
ザッザッザ・・・
一人の剣士が砂漠の中を歩いていた。
灼熱の太陽が容赦なく剣士に降り注ぐ。
「暑・・・・。何度来てもここの暑さには慣れないな・・・うわ!」
愚痴を言っていた剣士に突然砂を巻き上げた突風が襲い掛かった。
「ふう・・・うかうか油断も出来ないよ・・」
身に着けていたマントで咄嗟に風を防いだ剣士は、そう言いながらマントについた砂を掃った。
その剣士のマントにはギルドには所属している者の証であるエンブレムがついていた。
そして、砂を掃った剣士の右手には古ぼけた指輪がはめられていた。
「後少しでモロクか・・・・」
剣士の目的地である砂漠都市モロクはオアシスを中心として発展した都市で、砂漠を旅する冒険者には欠かせない水と食料を補給出来る唯一の場所である。
また、宝石などの鉱物の主な原産地でもあるため、宝石目当てで商人や観光客などもよく訪れる街でもある。
モロクで売られているアイスクリームは特に絶品で、あまりの美味しさに凍りつく人もいると言うのは有名な話である。
街にはそのアイスクリームを食べたいが為に、わざわざ遠い異国から訪れる物好きな人もいるくらいだ。
「後少しだから頑張るか」
そう言って剣士は気合を入れると、モロクを目指し砂漠を歩いて行った。

[13]

剣士が到着した砂漠都市モロクは今日も多くの人で賑わいを見せていた。
「バナナ安いよ~取れたて新鮮だよ~」
「あら~このダイヤ素敵・・ねぇあなた~これ買って♪」
「うちの肉は安くて美味い!!これはもう買わなきゃ損だよ!!!」
威勢の良い声が飛び交う中、剣士は水を売っている商人を見つけると、そこへ水を買いに歩き出した。
「すいません、水をください」
「あいよ~100zね」
剣士は商人にお金を渡して水を受け取った。
「毎度あり~♪」
剣士は水を受け取ったその時、遠くの方でざわめきが聞こえた。
「何か騒がしいな・・・どうしたんだろ?」
どうやらカプラ嬢の方で何かあったらしい。
剣士はカプラ嬢の方へと歩いて行った。

[14]

「あ・・・・」
騒ぎの場所・・・・そこで剣士はある光景を見た。
「ちょっとアナタ・・・また向かう気ですか!?」
やや大きめのカプラ嬢の声に近くで休んでいた数名の冒険者が振り向いた。
「邪魔をするのがカプラの仕事なのか」
対峙しているのは、カプラ嬢よりも小さなまだ子供のノービスだった。
睨み付ける瞳と、その傷だらけの様子。
「今、ピラミッドダンジョンより戻ってきたばかりではありませんか・・・
それに傷も癒えていないのですよ!」
「さっさと倉庫から薬を出してくれ・・それをぬったら行く」
「でも・・・何度目ですか?そんな無茶なことをしたって先には進めませんよ」
「うるさい!!あんたには迷惑かけているわけじゃないんだ!!
私は私のやりたいようにする・・」
無理やり手にした傷薬を傷に塗りこむ。
紅く腫れた傷がその色を濃くした。
空になった空き瓶を投げ捨ててピラミッドダンジョンへと走って入っていく。
騒々しい現場が静まり返る。
注目していた冒険者たちだったが、しばらくして再びお互いの話に戻り、
その場はなにもなかったかのように・・・元へと戻りつつあった。
「はぁ・・・また傷だらけでもどってこなければいいのですが・・・」
転がった薬瓶をひろいあげながらカプラ嬢はため息をついた。
「(あの子・・どうしてあんな淋しい目を・・・)」
剣士は傷だらけのノービスがどうしても気になって仕方がなかった。
カプラ嬢を冷たくあしらいながらも瞳の奥に見せた、孤独に囚われた淋しさと悲しさ・・・。
その辛さを知っている剣士には見過ごすことは出来なかった。
「そうだな・・・・。うん・・・わかってる・・ルイ・・」
剣士は指輪を見つめながらそう自分に言い聞かせると、カプラ嬢へと話しかけた。
「すいません」
「あっはい・・なんでしょう?」
ため息をついていたカプラ嬢だったが、剣士が話しかけると表情を一変させ笑顔で剣士にそう答えた。
そんなカプラ嬢に剣士も笑顔で声をかけた。
「さっきのノービスさん、もしかしてシーフギルドに?」
「えぇ・・おそらくは転職だとは思うのですが、シーフギルドまでにはファミリアやポポリンといったノービス一人では進むのが困難なモンスターもいますから・・・
危険と声をかけたのですが、先ほどのような感じでして・・・」
「そうですか」
「私にはあの子がなんだか・・さびしそうに見えて。
あの言葉が気持ちの裏返しのような気がして・・・っと、すみません・・私が皆様冒険者さまたちのことを勝手にお話してはいけませんね」
そういってカプラ嬢は少し寂しそうな笑みを浮かべた。
「いえいえ、僕こそすみません。
急に質問してしまって、あ・・よろしければコレをどうぞ」
そう言って剣士は一輪の花をカプラ嬢に渡した。
「え?」
「いつもがんばる砂漠のオアシスの貴女に。(そして・・あなたの本当の笑顔を取り戻すために・・)
それじゃ僕は行きますね」
そう言って剣士は急ぎ足でピラミッドダンジョンへと向かった。
「あ・・こうして人からお花を頂いたのは何年ぶりかしら・・フフフ・
お花か・・・いい香り」
カプラ嬢は安らかな笑みを浮かべてそう言った。

[15]

ピラミッドダンジョンへと向かった剣士は、入り口近くにあるオアシスで一輪の花をみつけた。
「あ・・こんなところにも花が」
そう言って安らかな顔で花を眺めた。
「・・・・・・・・花か・・」
剣士は何かを思い起こすように空を見上げた。
「ルイ・・俺はあの子の笑顔を取り戻してみせるよ・・・。
君が俺の笑顔を取り戻してくれたように・・・・あの子にもきっと・・」
その時爽やかな風が吹いた。
「気持ちいい・・・。花と風・・か・・・」
剣士は何かを確かめるようにそう言った。
「ルイ、俺は風になっていろんな人に君の想いを運んでみせる、君の想いを伝えてみせる・・・。
花は・・いろんな人を幸せにしてくれる、大切な人を笑顔にしてくれる・・・
その想いは必ず俺が運んでみせる・・・だから・・・見ていてくれ・・」
澄み渡る青空を眺めながらそう言うと、剣士はピラミッドダンジョンへと入っていった。

風が吹く・・・
想いを乗せるその風は・・・
遠くの誰かに想いを運ぶ・・・
大切な想いを・;・・限りない笑顔と・・かけがえのない幸せと共に・・・
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by iruto | 2007-10-12 08:07 | 風に舞う花のように
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