風に想いをのせて・・・

風に舞う花のように~第2章~

(´・ω・`)ノチャオ♪
見てる人がまた一人増えたってことで更新しますよ~。




[5]

ザッザッザッ・・・・
ペコペコの駆け抜ける音が夜の静寂な森の中に木霊する・・・
闇が支配する森の中をイルトはゲフェン目指してペコペコを走らせていた。
フェイヨンを出た時にはまだ少し傾いた程度の日も、もう既に闇の中に姿を隠してしまっていた。
「まいったな~ゆっくりしすぎて大分遅れちゃった・・・。明日にはギルドの集会があるって言うのに・・・」
ザッザッザッ・・・
「クェ~~~~」
「ん?疲れたのか?」
「クェ・・・」
「そうだよな、フェイヨンから休みなしでずっと走らせてきたもんな。
それじゃあこの辺で今日は休むか・・・よっと」
ズザー・・!!
そう言ってイルトはペコペコを止まらせると、その場に降りた。
「クェ♪」
身軽になったペコペコは嬉しそうにその場に座った。
「ふぅ、明日の集会は完璧に遅刻だなこりゃ。こんな時だけアコのワープポータルが羨ましいよ・・・。なぁシル~お前一応鳥なんだろ?空とか飛べたりしないのか?そうすれば移動もかなり楽になるのにな~・・・」
「クェェェ~」
ペコペコは残念そうに首を振った。
当然の反応である。
「だよね~、そりゃ空飛べたらとっくの昔に空飛んで生活してるよな。
仕方がない今日はもうここで野宿、明日のことは明日考えよう・・・」
諦めたイルトは焚き火に使えそうな木の枝と薪を集め始めた。
「こんなもんでいいかな?」
イルトは薪を簡単に積むと、一本手ごろそうな木の枝を持って構えた。
「シル、危ないから一応薪から離れてるんだぞ」
そう言ってイルトは詠唱を始めた。
「我願う悠久の時と共に草木に眠る精霊達よ、忌むべき時を刻まんとする闇を断ち切る為に・・汝の力を求め訴えたし・・・我は闇の時を断ち切る月幻より生まれし悠風の使者・・・はぁ!」
木の枝に炎が宿る。
そのままイルトは力を加減して積んである薪へと軽く振りかぶった。
シュ!
木の枝に宿った炎はそのまま地面を伝い薪にぶつかると小さな爆炎を起こした。
ボン!
その小さな爆炎は丁度良い強さの火種となり薪を包み込みこんだ。
「クェ~~」
ペコペコはその様子を見ながら喜んでいた。
「よし、焚き火はこんな感じでいいかな?マグナムブレイクも上手く使えばマッチ要らずだよな」
イルトはのん気にそんなことを言った。
普通ならマグナムブレイクを扱うのでさえ容易ではなく、ましてやその力を火種として加減して使うなど困難を極めることだと言うことにイルトは全く気がついていなかった。
もしこれを見ている騎士がいたなら、驚きと呆れた表情を浮かべたことだろう。
「さてと、焚き火もこれで大丈夫だしもう夜も遅いからそろそろ寝るか~」
「クェ~~」
そう言いながらイルトは腰から剣を外し木に立てかけると、マントを地面に敷きその上に横になる。
シルはいつもの様にイルトの横に腰を下ろすと、そっと目を閉じた。
イルトはそんなシルの頭を撫でると、仰向けになり星空を眺めた。
「(星か・・、もう夜なんだよな・・・結局今日もナイルの手がかりは何も得られなかったな・・・。
ナイル・・君は今どこで何をしているんだ?君の身に何かあったのか?何事も無く無事ならいいんだけど・・。
でもこれでただ俺が嫌われただけだったってオチなら俺最低にかっこわるいな、でもそれならナイルも無事ってことだし結果としてはいいのかな。
ははは・・、でも・・今日もいろいろ疲れたな・・・そろそろ・・眠くなって・・・き・・・)」
イルトはそのまま心地よい眠りに身を任せようと目蓋をゆっくりと閉じたその時である、
ガサガサガサ!!
突然鳴り響く草木を掻き分ける音と共に凄まじい殺気がイルトを覆った。
「!?」
イルトはすぐさま飛び起きると、その殺気が向かってくる方向を睨み身構えた。
・・・来る!
そう思うや否やイルトは横に飛んだ。
ブン!
空気を裂き低い唸り声を上げて飛んできたソレは直前までイルトが寝ていた場所に突き刺さる!
それは太さが30センチはあるだろう木の幹で、強引に折られた跡のあるそれは相手の力の強大さを物語るように地面に深く突き刺さっていた・・・・。
どうやらシルもギリギリでかわしたらしく、イルトの後ろで身構えていた。
「シル逃げろ!」
イルトはシルに向かって一言そう言うと、ゆっくり近づいてくる相手の正面を向き再び身構えた。
暗くてよく見えなかった相手が焚き火の明かりで姿を現す。
「な!!?」
2メートルは楽に超すだろう巨体に太く鋭い爪、そして全身を覆う燃えるような赤色の獣毛・・・。
「グリズリー・・何故こんな所に・・本来はこんな所にいるはずがない・・・、と言うことは考えられる可能性は一つ・・・枝か」
古木の枝・・一般的に『枝』と呼ばれているそれは長い歳月の流れで魔力を持つ事が可能となった木の枝であり、その魔力の強大さ故種類を問わずどんな魔物でも封じ込めてしまう。
逆にその魔力を解き放ってしまえば、中に封じ込められていた魔物が姿を現してしまう。
そしてその魔力を解き放つ方法・・・・それはただ『折れ』ばいいのである・・・。
それ故に恐ろしいのである。
悪用すれば街一つ簡単に壊滅させることが可能となるのだから・・・・。
「ちっ・・この辺りだと初心者も比較的簡単に手に入れてしまうからな、誰かが知らずに折ってしまったのか・・・」
そう言いながらイルトは突進してくるグリズリーをかわす。
一度でも攻撃を喰らえば深手を負うのは確実。
荒い息を吐き出しながらグリズリーは大きく腕を振り上げイルト目掛け攻撃してくる。
何とかかわしてはいるがそれもギリギリだった。
そんなイルトを他所にその巨体からは想像も出来ない速さでグリズリーは攻撃を繰り返す。
「く・・このままではやられる・・」
イルトは正面から繰り出された攻撃をかわすと、体勢の整わないグリズリーを踏み台に後方へと思い切り飛んだ。
空中で一回転し体勢を整え着地すると同時に木に立てかけてあった剣を手に取りグリズリー目掛け地面を蹴った。
ザッ!
一気にグリズリーとの間合いをつめ反撃しようと剣に手をかける。
ズキ・・・
鞘から剣を引き抜こうとした瞬間、頭痛と共にあの日の光景が脳裏に蘇る。
「ク・・!」
そして強烈な吐き気がイルトを襲い視界が歪む・・・・・。
「(・・・やばい!!)」
イルトは咄嗟に攻撃をやめ、横に飛んだ。
ズザァーーー!!
無理やり横に飛んだため体勢を崩し地面を転がる。
グリズリーはその隙を逃さずイルトに攻撃を仕掛けた。
「グォォーー!!!」
凄まじい雄叫びと共に振り下ろされる腕・・・。
体勢が整っていない・・・・かわせない!!
ガッ!
咄嗟に持っていた剣を盾に攻撃を防いだがそれもほとんど意味も無くイルトは吹き飛ばされる!
「っ!」
ドン!
背中に激しい衝撃が走る。
吹き飛ばされたイルトは木に背中を打ち付け地面へと叩きつけられる。
「・・痛っ・・・」
何とか致命傷は避けられたようだがダメージは大きい・・・。
すぐに起き上がり体勢を立て直そうとイルトは体に力を入れた。
「・・あれ?」
体が硬直したように痺れて動かない・・・・スタンだ。
「・・しまった!」
魔物の中には攻撃時に特殊な音波を出す者がいる・・もしその音波をまともに喰らうと三半規管が一時的に麻痺し、平衡感覚を失う・・・つまり行動不能に陥るのである。
特殊な音波を発生させ行動不能にさせる技の一つにハンマーフォールなどが上げられ、熟練した騎士であればバッシュでも同様の音波を出すことが可能である。
「くそ・・・」
グリズリーはその魔物の中の一匹なのだと言う事をイルトは忘れていた。
スタンになって初めて思い出すとは皮肉な事である。
「動け・・・動けよ!!」
イルト無理やりにでも身体を動かそうとするが全く言う事を聞かない。
そしてそんなイルトに止めを刺そうとグリズリーは猛然と突進してきた!
「グァウ!!」
「(・・・・これまでか・・)」
イルトは覚悟を決めた・・・・。
「もぅ、だらしないな~」
その言葉と共に何者かが木の上から飛び降りイルトの前に降り立った。
暗くて姿はよく見えないが、そのシルエットから人間であるようだ。
その何者かは両手に刃物のような物を持つと、突進してくるグリズリーに攻撃を繰り出す。
ザンザン!
美しい閃光がグリズリーを十字に切り裂いた。
「グォォォォ!!」
その攻撃に怯んだグリズリーは一旦後ろに下がり間合いを取る。
「ほら~いつまでそうやって座って見てるつもり?早く起きて手伝ってよ」
「あ・・・うん」
何者かにそう言われ直ぐにイルトは起き上がった。
いつの間にか身体の自由も戻っていた。
「君はいったい・・・」
「ほら、そんなことよりもあいつ倒す事の方が先!」
「だが・・・・そうだな」
一体何者なのか気になったが今はそんなことよりも敵を倒すことが最優先である。
「俺が敵の注意を引くから君が止めを刺してくれ」
「わかった」
「行くぞ!」
そう言ってイルトはグリズリー目掛け地面を蹴った。
一気に間合いを詰めると手始めに回し蹴りを喰らわす。
ドス!
「グゥ!」
グリズリーが低い呻き声を上げる。
すぐさまグリズリーが反撃に出るが先ほどよりも動きが鈍い。
難無くイルトは攻撃をかわす。
どうやら先ほどの攻撃に毒が盛り込まれていたようで、動く度にグリズリーは悲痛な呻き声を上げる。
その隙にイルトは更に追撃を繰り出す。
「剣が使えなくたって!!」
右足で下中上と三連蹴りを入れ、反撃をかわしながら背後に回り休み無く肘撃ちと正拳突きを入れる。
しかしグリズリーは怯むことなくイルトに反撃をした。
「甘い」
簡単にその攻撃をかわすと今度は一旦後ろに飛び、着地と同時に地面を蹴り反動をつける。
一気に間合いを詰めグリズリーの腹部の傷目掛け右手で一撃を入れ顎に上段蹴りを入れる。
見事に顎に一撃が入ったグリズリーは一瞬怯み、その隙にイルトはしゃがみ足払いを繰り出し空中に飛ぶ。
「ガゥァ!」
綺麗に入った足払いでグリズリーは仰向けに地面に倒れ、そこにイルトは空中で回転しながら落下のスピードに遠心力を加え腹部の傷へと踵落しを入れた。
ズドン!
「ブハァ!」
無防備に喰らった一撃にグリズリーは苦しそうな息を吐き出した。
だがそれも一瞬の出来事でグリズリーは何事も無かったかの様に起き上がってきた。
「まるで岩を殴ってる感触だ。やっぱりグリズリー程の防御力には体術は効かないか、ほとんどダメージを与えられて無い」
平然とイルトに向き直るグリズリー。
だが先ほどの攻撃が逆鱗に触れたのかグリズリーは先ほどとは全く異なる殺気をイルトに向けていた。
「本格的に殺しにくる・・・止めは頼むぞ・・マジで・・」
「グオォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」
強烈な雄叫びと共に怒り狂ったグリズリーがイルト目掛け突進してきた!
「ク!」
速さが先ほどとは比べ物にならなく、イルトはかわすので精一杯だった。
だが攻撃をかわしながらもイルトは魔力を練る。
「頼むから攻撃当たるなよ!」
そう言ってイルトはグリズリーにプロボックをかけた。
イルトが放った魔力によりグリズリーの理性が完全に消える。
「グオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーー!!!!!!!!」
理性の完全に消え本能のみで怒り狂ったグリズリーは捨て身でイルト目掛け暴れ回る!
「ち・・攻撃を予測出来ない・・・」
思いもよらぬ攻撃がイルトを襲う。
「!!」
咄嗟に右に飛ぶ。
「うわぁ!!!」
次の瞬間にはイルトの視界は回っていた。
イルトは人形の様に吹き飛ばされ地面を転がる。
ズザーーーーーーー
「くそ・・・ほんの少し掠っただけでこれかよ・・・。やっぱグリズリーにプロボックは危険だ・・・」
そしてすぐ顔を上げる。
「っ!?」
なんとグリズリーがもうすぐ目の前まで迫ってきていた!!
「く・・・」
慌ててかわそうとするが体制が悪い・・かわしきれない・・
そう思った瞬間グリズリーの足元の地面が隆起し棘の如くグリズリーに突き刺さった。
グリムトゥースを仕掛けたと同時に地面からさっきの何者かが姿を現し無防備なグリズリーの急所に一閃を入れた。
サン!
「グォォォォォォーーーー!!!!!!!」
見事に急所を捕らえたその一撃にグリズリーは悲痛な声を上げる。
「止め!」
そう言った次の瞬間瞳が怪しく光り高速の八連撃・・・ソニックブロウを繰り出した。
ズザザザザザザザ!!
それはまるで舞いを踊るかの様な華麗な攻撃だった・・・・。
「グ・・ガ・・・ァァ・・・・」
・・・・・・ドサ
まともにソニックブロウを喰らったグリズリーはその場に崩れ落ちた。
「ふぅ」
何物かは軽く息を吐き出すとくるりとイルトの方を向きゆっくりと近づいてきた。
「大丈夫?」
「ああ、なんとかね・・ありがとう助かったよ」
「そう、よかった」
「一つ聞いていいかな?君は一体何者なんだい?」
「イルト酷い・・・私のこともう忘れたの?」
「え?」
「ほら私だよ?声聞いてもわからない?」
そう言ってイルトの直ぐ側まで近づいたその時、木の隙間から差し込んだ月の光が闇に溶け込んでいたその姿を照らし出した。
空色の髪・・そして金色の瞳・・・そう・・その姿をイルトは知っていた。
見間違えるわけがなかった・・・その姿を今までずっと探し続けていたのだから・・・・。
「ナ・・ナイル!?」
「やっとわかったの?もう・・イルトの甲斐性なし」
「いやゴメン・・暗くてよく見えなかったし・・・。それにその姿、アサシンになったなんて知らなかったから」
「そうだったね・・・伝えたくても中々伝えられなかったから・・・」
「気にしなくてもいいよ。でもナイルが無事でよかった、今まで連絡取れなくてずっと心配して・・・た・・か・・・」
ドサ・・
「イルト?イルトどうしたの!!?ねぇしっかりして・・・イルト!!!」
静寂な森の中に響くナイルの必死の呼びかけにも・・意識の途切れたイルトに届くことはなかった・・・。
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by iruto | 2007-12-08 19:31 | 風に舞う花のように
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